吾輩は窓である

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吾輩は窓である

「吾輩は窓である。名前はまだない。どこから来たのか、どこへ行くのか、そんなものは知らない。ただ、ここにあり、外の世界を見つめているだけだ。

そう、私は窓なのだ。
部屋の一角に据え付けられ、外の世界とこの部屋を繋ぐ役割を担っている。日々、様々な光景を目にする。朝日が昇り、街が徐々に目覚めていく様子。小鳥たちがさえずり、子供たちが元気よく遊ぶ姿。
雨の日には、しとしとと降る雨粒が窓ガラスを叩く音。時には、月夜に浮かび上がる美しい風景も目に焼き付ける。

私は無言の観察者だ。
喜怒哀楽を表現することも、感情を持つこともない。
ただ、そこにあるだけ。
外の世界の光を部屋の中に運び込み、その光の中で、人々は様々なドラマを見守っている窓。
恋に悩み、仕事に追われ、人生の喜びや悲しみを味わう。
私はそれらの全てを静かに見守っているだけ。

夏の日には、強烈な太陽の光が降り注ぎ、私は灼熱のオーブンと化す。
冬には、冷たい風が吹き込み、私は震え上がる。
しかし、どんな状況にあっても、私は決して自分の役割を放棄しない。
外の世界とこの部屋を繋ぐ、その役割が窓だから。

ある日、一人の男が部屋にやってきた。彼は窓際に座り、遠くを見つめていた。
彼の表情はどこか寂しそうだった。
私は彼の心の奥底にあるものを知りたくなった。
しかし、私は言葉を持たない。
ただ、静かに彼の横に座り、共に外の世界を見つめることしかできない。

やがて、彼は立ち上がり、部屋を出て行った。
彼の姿が消えた後も、私はしばらくの間、彼のことを考えていた。
彼は一体何を考えていたのだろう?
彼の心には、
どんな想いが詰まっているのだろう?

私は窓である。
何も語ることなく、ただそこに存在し、外の世界を見つめる。
そして、様々な出来事を目にする中で、私は少しずつ成長していく。
いつか、私も言葉を持ち、人々と心を通わせることができるようになるのだろうか。

私は窓である。
その青年が私が見守る最後の人間となるであろう。
何故なら、このアパートも50年以上の年月を経て老朽化が進んでいる。
後2年で取り壊しが決まっているからだ。
最後に見守る青年は、地方から東京に働きに来ている様で、2年間で仕事が
上手く行かないようで有れば、故郷に帰る約束をして東京に出て来たそうだ。
私と同じ残された時間は2年。

先程に部屋を出て行った青年が部屋に戻って来た。
窓縁に肩を落とし座り込みと、大きなため息を掃き出した。
私にはため息を吐くと言う気持ちがない。
何故なら窓だから。
外は暗くなっており、その青年の疲れた顔がガラスにぼんやりと映り込み。
おもむろに、手紙を開きたて続けにため息が。
ガラスに写り込んだ手紙には、不合格の文字が大きく書かれていた。
多分、就職が上手く行かなかったのだろう。

その青年は、毎朝7時には部屋を出て、17時には部屋に戻ってくる。
戻っても何をする訳でもなく、毎日私の横に座ってうす暗い外を眺めている。
そんなある日のことだ、何時もと表情が違う事は誰が見ても分かる様な
笑顔で部屋に戻って来た。
何時もの様に私の横に座り手紙を見ながら笑っている青年は、私は初めて
いていた。

ガラスに写り込んだ手紙には、合格の文字が書かれていた。
私も嬉しくなり微笑んだが、窓なので表情は無い。

私は窓である。
この青年の限られた時間を過ごすのが楽しみである。
何故なら、窓は全ての入口だからだ。

解説

 


記事を書いた人  代表取締役 中沢 仁郎

マドリモの発案者として、施工実績数にはこだわりを持っており、YKKAPのマドリモ取扱数6年連続で全国1位をいただいております。

また、補助金に関することは専門の事務体制を設け、工事費負担を少しでも軽くするための体制も整えています。

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